種苗法廃止についてあれこれと

種苗法廃止についてあれこれと

少し前フェイスブックで「種子法の廃止について」の投稿がシェアされて回ってきた。

それよりもさらに少し前から「種苗法の廃止について」のあれこれはいろいろなところから聞こえてきてたし、ネットニュースで読むこともあった。でもイマイチピンとこなかった。

というか、まず、ニュースやフェイスブックの投稿を見ても種子法廃止について、ポジティブに捉えている記事はまずない。

種取りをしたり、小麦(主要作物)を育てている僕は、そういうニュースには意識を持つようにしているのだけれどなんだかピンと来ない。読んでもいまいち内容が入ってこなかった。なんだか大変らしいぞくらいにしかわからなかった。

ただ、ひょっとすると種苗法の廃止は僕にとってはありがたいことなんじゃないだろうかとも思った。安く色々な品種の小麦を使うことができるようになるかもしれない!!とちょっと思ったからだ。

 

僕は今、自然栽培で小麦を栽培している。と言っても栽培面積は15m×30m=450㎡ほど。これは小麦の栽培面積でいえば極小。商売になんてなりはしないちょっと大きめな趣味といった規模でしかない。

だからもちろん農協に作物を卸すなんてことはないし、ということはつまり農協から小麦のタネを買うこともない。とはいえ小麦のたねは普通のホームセンターには売っていない。インターネットで売っている数少ない販売店から買っている。でも、小麦の種を販売している種屋の数もそもそも少ないが、そこで売られている品種の数も少ない。

僕はその中から北海道のパン用春まき小麦品種の代表格であるハルヨコイを撒いているけれど、本当に育てたい作物はこれではない。例えば強力粉ならキタノカオリを育ててみたい。こちらの方がパンがもちもちしすぎないで個人的に好みだというのもある。それと薄力粉品種であるホクシン小麦も栽培したい。だけれどその種を買うことができない。

1度、米麦協会やJAに問い合わせたが予定生産量以外に入手することは小麦農家でも困難であり一般には販売していないとの回答だった。まあ、当たり前だし、僕もそうだろうと思って聞いていたから残念でもない。

それは、国や行政の判断としては至極当然だから、まあそうだろうなくらいにしか思わなかった。

 

米や小麦がトマトやかぼちゃなどなど普通の野菜と違うのはなんとなくわかってもらえると思う。米や小麦はいわゆる主要作物だ。

主食になる作物といったほうが話が早いかもしれない。日本だと米、それに小麦、あとは大豆も主要作物の一つだ。海外ならこれにトウモロコシも入るだろう。

主要作物生産はある意味国の根幹を担っている。もしも僕のように自然栽培で小麦栽培をする人が増えて、ひょっとするとその中からカビの病気を発生させてしまったりすると、一気に広がってしまう可能性がなくもない。そうしたら、その可能性を低くするために主要作物は参入障壁を高くする。というのはなんとなくわかる。自然栽培といっても体にいいわけじゃない。添加物なんかよりもずっと発がん性の高いカビもある。

 

でも、そうした病気の発生を抑止するには多様性を持たせておくことも大切だし、薬物に頼りすぎない品種もより重要になってくる。だから、もしも仮に、主要作物種子法を廃止することで、小規模農家や場合によっては趣味の園芸の人にまで多種多様な主食作物が広がればそれはとてもいいことなのではないだろうか。と思った。

でも、そうやらそうなならないらしい。というか、なりそうもない。

と、これについて考えているときにとても役にたったリーフレットがありますのでここで一旦コマーシャル!!

日本種子を守る会という団体の方が発行しているリーフレットです。10部ずつ購入できるらしいので僕も10だけですが購入して、興味のありそうな人に配りました。それと5部だけですがクスクスオーブンさんに置かせてもらっています。まだあるかな?興味がある方は覗いて見てください。さらに興味が募った方はぜひ取り寄せて見てください。とてもわかりやすいです。

https://www.taneomamorukai.com

HPも僕の話よりもわかりやすいので、見てみてください。

さてコマーシャルはこのぐらいにして、種子法とはなんなのか。

 

正式名称を主要農作物種子法。主要農作物とは米、麦、大豆。上でも少し触れましたが、いわゆる野菜とは異なり私たちの食習慣の根幹になっているものです。なのでこの種子法の廃止については、トマトやら人参やらその他の野菜は全く関係ありません。

この主要作物種子法。廃止されてしまいましたがどういうものだったのかというと、優良な種子の生産普及を「国が果たすべき役割」として定めていたものでした。とてもシンプル。実際には国というよりは都道府県ごとに競い合うような形でお互いの都道府県にとって目玉となりうる品種の改良普及を国からの援助も受けながらやっててきました。その根拠となるのが種子法でした。

そしてそれを廃止する理由。それは民間企業の参入を促すためです。僕はめちゃくちゃ嫌いな標語なのですが「強い農業」を目指すと言われてからもう随分と立ちました。その過程で競争力強化のための施策として民間参入を促しているというのは近年の日本農業の流れでした。

それはある意味ではしょうがないことでもあります。高齢化が進み跡取り問題が全く改善しないために、それなら作物生産を企業にになってもらおうというのはしようがないようにも思えますすし、いいことでもあるのかもしれません。でも、僕は大規模、強いを目指すよりも、小規模で豊かな農業がたくさんある方がなんだかいいような気がします。実際にできるかできないかは別として、日本の農業は成長よりも成熟するべきです。

ただ、今回の種子法廃止が、いわゆる企業の農業参入とは異なって大きな問題を孕んでいるのはそれが「種」に関することだからです。

さて、ここからは種子法が廃止されたことで起こりうることを上でも取り上げたリーフレットで書かれていたこと、それに補足して色々と、それと僕個人の楽観予測も書いていこうと思います。

 

種子生産が公から民間に移行していく

いいパターン

もしも種子生産市場に参入する企業が、利益ばかりを追い求めるのではなくいい感じの企業だったら。と言ってもなんだかかなりふわっとしていますね。今まで都道府県が担っていた主要作物種子生産を健全に発展させることができれば、それなりに面白い、美味しい新しい品種が生み出される可能性は高くなると思います。僕の趣味思考でいえば、遺伝子組み替え品種はつかはないで、一強品種を作るのではなく、元々の遺伝に乗っ取って多様な品種が用意されるのなら、質が高くなるかもしれません。

悪いパターン

悪いパターンです。もしも大企業が合併を繰り返して大きな企業が数社だけ存在する市場になってしまったり、あるいはグローバル企業が独占に近い状態で種子を販売したら、種子の多様性の観点から見ても危険なことですし、企業は容易に農業生産を管理できるようになるので、それが価格農家の収入に影響を及ぼすことになる可能性も捨て切れません。それにおそらくそうなっても僕のような小規模生産者には種子が行き渡らないか、めちゃくちゃ高いと思います。さらに主要作物がF1品種になったら、もう、最悪だ!!

これは最悪中の最悪な話ですが、インドでは農民がモンサント等遺伝子組み換え種子を買い、その遺伝子組み換え種子のために設計された肥料と農薬をその会社から買い、翌年にはまたその種を買いというサイクルの中で全く儲けることができないで搾取されてばかり、、、というのが問題になっています。アルゼンチンの綿の生産などもそうです。

こうした、遺伝子組み換え作物、ならびに商標登録によって守られた種を買い続けなくては農業を続けることができないというサイクルになってしまうような人が日本で出てくる可能性もゼロではない。今まではその可能性が種子法のおかげでありえなかったことが、今回廃止したことでそのリスクが発生したというだけでも、もっと種子法廃止について考えるべきだったのではないかと思わずにはいられません。

そしてリーフレットを読む限り、はたまた、種子法廃止の根拠になったワーキンググループのメンツを見る限りでも、なんというか、んー。いい方向ではないなという感じ。

 

じゃあ、僕らが何をできるのかというと。淡々と固定種の野菜の種をとって継いで行くことなのかもしれない。

まだ全部固定種にはしていないし、うまく種子が取れるもの、あまり取れないものもあるけれど、今年は去年にもまして種をモリモリと取っていこうと思います。

 

 

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